NICU卒業生のフォローアップ

医療技術の進歩により新生児集中治療室(NICU)では多くの赤ちゃんを救命できるようになりました。しかしながら、NICUを卒業したお子さんの多くは、退院後も引き続き長期にわたって成長や発達を見守る必要があります。そのようなお子さんが退院後に日常生活を送るうえで受け皿となるクリニックの存在が必要です。クリニックでは、長くNICUの診療に携わっていたからこそ分かるNICU退院後の生活についての困りごとや日々の健康管理についてアドバイスを提供します。超早産児・超低出生体重児で生まれたお子さんは、小学校以降、さらには成人期にも注意しないといけない点(生活習慣病が多いなど)が分かってきました。当院では小児科と内科がタッグを組んで診察しておりますので、超長期のフォローアップにも対応可能です。また、クリニックではNICUにお子さんが入院中のご家族の相談にも応じています。病院と同じ搾乳機を使ってみたい、母乳の分泌が増えないなど、NICUにお子さんが入院しているお母さんが抱える悩みや困りごとにも対応します。

  • NICU入院中のお子さんで当クリニックでの退院後のフォローをご希望の方は、まずお気軽にお問い合わせください
  • 必要でしたら、退院前からカンファレンス等にお伺いいたします
  • NICU退院直後のお子さんの訪問診療(体調確認、体重測定、予防接種など)にも対応しています

お子さんがNICUに入院中のお母さんへのメッセージ

お子さんの誕生日おめでとうございます。お子さんの誕生を心待ちにしていたのに、どうして私たちのこどもが新生児集中治療室に入院してしまったのだろう。だれが悪いわけでもありません。決して自分を責めないでください。どんな医学が進んでも、一定の割合でNICUに入院するお子さんは生まれてきます。でも安心してください、赤ちゃんは我々が考える以上に無限の生命力に満ちあふれています。赤ちゃんはお母さんのおなかの中にいた時と同じで、NICUに入院していてもお母さんお父さんの声やにおいを感じています。多くのお子さんはお母さん、お父さん、ご家族の愛情を受けて、立派に成長され、そしてお家に帰ってきます。退院までには多くのハードルを越えないといけないこともありますが日本の新生児医療の治療成績は世界で最高水準です。病院の新生児科医の先生、看護師さんがきっとあなたを支えてくれるでしょう。病院に足が向かない時もあると思います。だけど、どうか、たくさんお子さんに会いに行ってあげてください。

母乳継続の重要性

 NICUに入院したお子さんにとって母乳栄養の継続はとても大切です。腸も未熟であり栄養の吸収もよくありません。母乳には、お母さんの愛情とともに赤ちゃんの成長にとって大切な栄養素がたくさん含まれています。母乳によって赤ちゃんや感染から守られたり、体重増加が得られやすくなったり、壊死性腸炎や未熟児網膜症などの合併症の発生リスクを下げることができたりします。お子さんは身体が小さいため、直接お母さんのお乳を吸えるようになるまでには、数週間、場合によっては数か月の時間が必要かもしれません。それまでの間、母乳の分泌を維持することはとても重要ですが、搾乳を継続することはとても大変な仕事かもしれません。ですが、母乳にはそれを上回るメリットがあります。ですから、少量でもいいので可能な限り母乳を搾乳してNICUに入院している赤ちゃんのもとに届けてあげてください。でも、どうしても母乳が出なくなることもあります。そんな時には自分を責めないでください。

自宅で購入可能な搾乳機の紹介

おおくのNICUでメデラ社製のシンフォニーが採用になっていると思います。基本的にダブルポンプで左右同時に搾乳可能なタイプです。病院で使われている電動タイプの搾乳機は基本的に病院でしか使えないため、(一部でレンタルステーションでレンタルすることも可能なようです。松江市ではいっしょに子育て研究所がレンタルステーションになってます。)自宅での搾乳にお困りになるお母さんが多いように思います。以下に、自宅で購入可能なメデラ社の搾乳機をまとめてみましたので、参考になさってください。

ダブルポンプタイプ(電動)
シングルタイプ(電動)
手動タイプ
母乳をNICUに持っていく際の注意点

搾乳した母乳を母乳パックに清潔に入れてもらって、自宅の冷蔵庫で冷凍していただくわけですが、お子さんが入院されているNICUの方針にもよりますが、冷凍した母乳の賞味期限は1か月としているところが多いと思います。自宅で搾乳した母乳を、NICUに運ばないといけないわけですが、遠方の場合はクール宅急便を利用した方が、確実に温度管理された母乳を届けられます。ただ毎回クール宅急便というわけにもいかないですし、面会の日には母乳も一緒に届けたいと思います。ただ、NICUに母乳を届ける場合に注意してほしいのが、溶けないようにしてほしいことです。途中で溶けた母乳は多くの場合24時間以内に使用するという施設が多いと思います。せっかく届けた母乳が溶けてしまって使えないのは悲しいですよね。それを防ぐために、しっかり対策をしていきましょう。保冷バッグに保冷剤を敷き、さらに母乳パックの間に保冷剤を潜り込ませるといいと思います。

パリズスマブ製剤(シナジス®)について

RSウイルスは、かぜなどの呼吸器感染症の原因となるウイルスのひとつです。2歳までにほぼすべてのお子さんがかかるとされます。通常はRSウイルスにかかるとかぜ症状で収まることが多いですが、NICUを退院したお子さんがRSウイルスに罹患すると細気管支炎や肺炎、無呼吸発作などを合併し、命にかかわる事態になることがあります。そこでRSウイルスにかかると重症化しやすいお子さんに対して、流行開始時期より前にあらかじめRSウイルス感染を予防するためにパリズスマブ製剤を投与します。投与開始時期は地域の流行状況に合わせて開始しますが、毎年おおむね6~7月ごろから翌年2~3月ごろまで毎月1回投与を行います。当クリニックでシナジスの投与を行っておりますので、ご希望される方は、お気軽にご相談ください。松江市のクリニックでシナジスの投与を行っているのは当クリニックのみです(おそらく)。

妊娠・授乳中のお母さんの内服の相談

 妊娠中または授乳中のお母さんにとっては、自分が内服するお薬が赤ちゃんにとって安全かどうかが大きな問題になります。妊婦・授乳婦に対する医薬品の情報源として医薬品添付文書は薬事法に法的根拠を持ち、日本では最も重要な資料になります。しかしながら、多くの薬剤の添付文書では「妊娠中の投与に関する安全性は確立されていないので、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみに投与する」「母乳への移行が報告されているので投与中は授乳を中止するないしは避けること」とされ、妊娠中・授乳中のお母さんにとって多くの薬剤が禁止されていました。このような妊婦・授乳婦への薬剤投与の在り方について臨床現場の混乱があり、2019年に医薬品添付文書の改訂が20年ぶりに行われ、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること」「治療上の有用性及び母乳栄養の有益性を考慮し授乳の継続または中止を検討すること」と変更されました。特に母乳育児に関しては栄養学的なメリットだけでなく、母子の愛着形成や感染予防、将来の生活習慣病の予防につながるなど様々なメリットがあります。これらのことを踏まえ、今後は医師等が治療上の有益性とリスクをお母さんと相談して内服するかしないかを決めることが求められています。これまでよく臨床の場面であった「この薬を飲むなら母乳をやめましょう」と自分がお薬を内服しているから母乳育児をあきらめるお母さんがひとりでも減るように、当クリニックでは内服が必要なお母さんの母乳育児の継続をサポートしていますので、お気軽にご相談ください。

妊娠前後・授乳中のお母さんのワクチン接種について

当院では周産期専門医でもある小児科医が妊娠前後や授乳中のお母さんのワクチンの疑問について適切にアドバイスを行い、インフルエンザワクチンなど有効性が分かっているワクチンについては可能な限り接種いただける環境を整えています。お気軽にお問い合わせください。