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小児科外来で使用する抗菌薬

急性上気道炎(かぜ)の原因はウイルス(アデノ、インフルエンザ、ライノ、コロナなど)であり、細菌ではないため抗生剤は効果がありません。効果がないところか、薬剤耐性菌を誘導してしまう恐れがあります。薬剤耐性菌を保菌していると本当に抗菌薬が必要な時、例えば手術や菌血症などの重症細菌感染症にかかった時に、抗菌薬が効かなくて、治療に難渋します。多剤耐性菌が出現し、使える抗菌薬の種類は減っている一方で、新規の抗菌薬の開発は限界にきているともされています。いまある抗菌薬を適切に使用して、耐性菌を作らない取り組みがクリニックでも必要です。

実際、小児科の外来では、抗生剤を使う場面は限られています。薬剤耐性菌からお子様を守り、無用な薬剤耐性菌を作らないためにクリニックでは、抗菌薬は、本当に感染症が疑われるときのみに限定して処方するようにしています。

急性中耳炎

主な原因菌は肺炎球菌やインフルエンザ桿菌、モラキセラ・カタラーリスなどです。

アモキシシリン(AMPC) (60~)90㎎/kg/日 分2~3 5~10日間 少々、内服量が多くなるので飲ませ方に工夫が必要です

溶連菌性咽頭炎

原因菌はA群β溶連菌です。クリニックでは迅速検査で診断しています。

アモキシシリン(AMPC) 40㎎/kg/日 分1~2 10日間

細菌性肺炎(年少児)

主な原因菌は肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、モラキセラ・カタラーリスです。

アモキシシリン(AMPC) (60~)90㎎/kg/日 分2~3 5~7日間 内服量が多くなるので飲ませ方に工夫が必要です

細菌性肺炎(年長児~)

主な原因菌はマイコプラズマなどです。診断はLAMP法などで行います。

アジスロマイシン(AZM) 10㎎/kg/日 分1 3日間 3日間飲めば、その後1週間は有効な血中濃度が維持されます

百日咳

百日咳は百日咳菌が原因です。年長児や小中学生で咳が続くときに、鑑別が必要になります。最近発売された迅速診断キットやLAMP法などで診断を行います。5類感染症のため全数報告の対象疾患です。

クラリスロマイシン 15㎎/kg/日 分2 7日間

急性化膿性リンパ節炎や伝染性膿痂疹(とびひ)など

主な原因菌は黄色ブドウ球菌です。まだ市中感染のMRSAの頻度は多くないことから、まずはMSSAとして治療を開始します。

セファレキシン(L-ケフレックス小児用細粒) (25~)50㎎/kg/d 分2~3 5日間

尿路感染症(腎盂腎炎、膀胱炎)

主な原因菌として大腸菌や腸球菌などがあります。大腸菌に関しては耐性化が進んでいてESBLのこともありますが、まずは感受性あるものとして治療を開始します。

セファレキシン(L-ケフレックス小児用細粒) (25~)50㎎/kg/d 分2~3 7日間

ここまで見ていただくと、小児科の外来で処方する抗菌薬は、アモキシシリン、ケフレックス、クラリスロマイシン(orアジスロマイシン)などの数種類に限られることが分かると思います。

以前は第3世代セフェム系抗菌薬がこども用の抗菌薬として、主に処方されていましたが、様々な点で問題があることが分かってきました。

第3世代セフェム系抗菌薬のなかで、セフカペンピボキシル:フロモックス®、セフジトレンピボキシル:メイアクト®などピボキシル基がついているものは長期に使用するとカルニチンを消費してしまい低血糖になることが分かってきました。カルニチンは脂肪酸をアシルカルニチンにβ酸化してエネルギーを得るために使われるため、長期にピボキシル基がついた抗菌薬を使用すると、脂肪からエネルギーが作れず、糖を消費してしまい低血糖を引き起こしてしまいます。

また第3世代セフェム系抗菌薬はバイオアベイラビリティが低く、経口摂取された抗菌薬が実際に有効な血中濃度を得るためには、添付文書で示されている量では不十分であることも分かっています。

ですので、クリニックでは、アモキシシリンにアレルギーがあるとか、どうしても抗生剤が飲めない場合に限り、第3世代セフェム系抗菌薬を処方するようにしています。

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