アレルギー

デルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏について

デルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏は、外用のJAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬です。現在、アトピー性皮膚炎の治療に使われているステロイド外用剤や免疫抑制外用剤とは異なる作用機序を持つ新規の外用薬になります。

作用機序

デルゴシチニブはJAKファミリーのキナーゼ(JAK1,2,3およびtyrosine kinase2)を阻害することでその作用を発揮します。アトピー性皮膚炎の病態にはサイトカインと呼ばれる物質が関与していて、例えば、IL-4,IL-13,IL-31などのサイトカインが受容体に結合すると、JAKシグナル経路が活性化され、炎症やかゆみを引き起こす原因になります。デルゴシチニブは細胞内のJAK経路から伝達される炎症を引き起こすシグナルをブロックすることで炎症やかゆみを抑える効果があります。

用量・用法

デルゴシチニブ(コレクチム®)軟膏は、2021年3月から小児にも0.25%製剤(成人は5%)が使えるようになりました。「1回5g、1日2回」までが決められた用量です。0.25%製剤は1本139.4円/g、0.5%製剤は144.9円/gです(3割負担の方は、5g軟膏1本で約200円前後の自己負担になります)。

効果

小児を対象とした臨床試験では最終評価時のmEASIスコアの変化率はプラセボ群と比べてコレクチム軟膏0.25%群で有意に大きく、プラセボ群に対するコレクチム軟膏0.25%群の優越性が検証されました(−39.35% vs. 10.90%、p<0.0001、共分散分析)

実臨床で使ってみた印象としては、かゆみに対する効果は高いように感じます。使用を開始して、およそ1週間~2週間ぐらい経過すると、かゆみが減ったというお子さんが多いように感じます。ただ、すでに強い炎症が起こっている部位に対しては、速やかに炎症を抑える効果は、やはりステロイドの方が勝ります。使用感は、タクロリムス製剤(プロトピック®など)でみられるような初期のピリピリ感や熱感などの刺激症状はないです。

副作用

これまで私が処方した患者さんでは、特に目立った副作用は経験していません。添付文書上の記載では、毛包炎、紅斑、ざ瘡、刺激感などの報告がなされています。

まとめ

アトピー性皮膚炎の治療の基本は、やはりスキンケアと適切な外用薬の使用です。速やかに炎症部位を抑えるということにステロイド外用薬の有効性は変わりないと思いますが、治療の選択の一つとして、新しい治療薬が登場したことは、患者さんにとっても喜ばしいことだと思います。ステロイドやタクロリムス、そしてデルゴシチニブそれぞれの特徴を活かして、患者さんに適切な治療を提供したいと思います。

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