痛くないワクチンの打ちかた
ほとんどのワクチンは注射で接種するため,接種時の痛みを避けられません。
痛みは主観的なものですので、個人によってその程度は異なりますが、ちょっとしたコツでその痛みの程度を緩和することができます。
子どもにワクチンを接種する際には、痛みを感じにくくする方法として、だっこする方法や気を紛らわせる方法があります1)。
気を紛らわせる方法(デストラクション)
乳児(1歳まで):
おもちゃで遊ぶ、歌う、シャボン玉を見せる,キラキラ動く飾りを見せる。
幼児(1歳以降):
自分でシャボン玉を吹く、ゲームをする、歌う、数を数える、関係ないことを話す
接種部位の反対の手でノック型ボールペンを早押しする など
表)小児のワクチン接種時の痛みを軽減する方法
痛みを軽減する方法 | 推奨グレード・エビデンスレベル |
母乳を飲ませながら接種する | A,Ⅰ |
乳児で接種中に授乳できない場合は、甘い飲み物を飲ませながら接種する | A,Ⅰ |
局所麻酔を使用する(あらかじめ接種部位にペンレステープ®︎やエムラ®︎クリームなどを塗布) | A・Ⅰ |
筋肉注射では、内筒を引いて血液の逆流を確認しないで、速やかに接種する | B・Ⅰ |
ワクチンが複数の場合、最も痛みを伴うワクチンを最後に接種する | B・Ⅰ |
3歳以上の小児は、接種中に深呼吸をさせる | B・Ⅰ |
接種中に、小児の気を紛らわせる | B・Ⅰ |
4歳以上の小児は、接種前から接種中にかけて、接種部位付近の皮膚をさする | B・Ⅱ―1 |
小児に「痛くないよ」と言う | D・Ⅰ(言わない方が良い) |
仰臥位で接種する | E・Ⅰ(仰臥位では接種しない) |
被接種者(ワクチンを打たれる人)にできること
1.あらかじめワクチンとその病気について説明を受け、接種の必要性を理解する。
2.背筋を伸ばして座り、リラックスする。
3.深呼吸、または息止め、軽い咳などで気晴らしをする。
4.医療機関によっては,あらかじめ局所麻酔を使用することもできます(ペンレステープ®︎やエムラ®︎クリームなど)
接種者の接種方法(小児と成人に共通)
1.同時接種の時は、一番痛いワクチンを最後にする。
2.プランジャー(内筒)を引かない。 血液の逆流確認は不要(接種に適切とされている部位は神経と血管が少ない部位)。
3.ワクチンを素早く注入する、刺入中は針の先を動かさない。
4.筋注は筋肉内に打つ。(筋肉注射できるワクチンを皮下に打つと痛い)
5.接種後に接種部位を圧迫する。
6.気を紛らわせるように話しかけ、笑顔で接種する(怖い顔で打つと痛く感じるため)。
接種時にしても鎮痛効果がないといわれていること
1.ワクチンを温める
2.経口鎮痛薬の内服
ただし、接種後数日間の痛みや熱には、経口解熱鎮痛薬を内服することで症状を緩和できます。
参考文献
1) Taddio A, et al. CMAJ. 2010; 182 (18): E843-E855.
2) Taddio A, et al. CMAJ. 2015; 187 (13): 975-982.
3) WHO. WER. 2015; 90(39): 505‒516.
4) Vaccine Administration, General Best Practice Guidelines for Immunization: Best Practices Guidance of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP) https://www.cdc.gov/vaccines/hcp/acip-recs/general-recs/administration.html?fbclid=IwAR3ZX8J7GOGHUET0wZuCUwJRTeELp9l2go_RrJ7FYnqhi-LJeFaOkfhlqkk