アレルギー

スキンケアについて

保湿剤の効果

保湿外用剤の使用はアトピー性皮膚炎で低下している角質層の水分含有量を改善し、皮膚バリア機能を回復・維持することでアレルゲンの侵入予防と皮膚炎の再燃予防、痒みの抑制につながる (推奨度1 エビデンスレベル:A) アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021 

アトピー性皮膚炎にしてもドライスキンにしても、治療の基本はスキンケアになります。そのスキンケアで中心になるのが、保湿剤です。

保湿剤の選択

ヘパリン類似物質含有製剤(ヒルドイド®など)>>白色ワセリン(プロペト®など)

保湿剤には、医薬品や市販薬を含め、いろいろな種類があります。水分を蓄えておく効果が強いのはヘパリン類似物質クリームで、白色ワセリンは皮膚の保護や水分の蒸発を防いでくれます。

ここで注意してほしいのは、ヘパリン類似物質についてですが、いわゆるジェネリック製品がたくさん出ており、玉石混交の状態です。お肌の状態によって、同じヘパリン類似物質でも、製品によって塗りやすさが異なったりしますので、薬剤師さんと相談されることをおすすめします。

ヒルドイドの規格・値段

剤型規格値段
ヒルドイドソフト軟膏25g、50g、100g、500g20.9円/g
ヒルドイドクリーム25g、50g、100g、500g20.9円/g
ヒルドイドローション25g、50g20.9円/g
ヒルドイドフォーム原液92g21.0円/g
お薬の値段はフォーム剤が21円/g、その他のものも20.9円/gでほぼ同じです。
ジェネリック医薬品の場合、軟膏・クリームであれば3.7~6.6円/g、ローションなら5.4~10.3円/g、フォームなら10.3g/円です。

ヒルドイドには軟膏、クリーム、ローション、フォームタイプの4つの基剤があります。

基剤の伸びやすさを比較するとフォーム>ローション>クリーム>軟膏の順になり、

皮膚への残りやすさを比較すると軟膏>クリーム>ローション>フォームと逆の順番になります。

皮膚の状態や、塗る場所(顔など厚く塗りたいときは軟膏、頭皮や全身に塗りたいときはローション)、また季節(夏などはフォーム)、お子さんのご様子(暴れて塗らせてくれないときや保育園に行く前に塗りたいけど朝忙しい場合などはフォーム)を総合的に判断し、実際に診察室で使ってもらってみて、処方をするようにしています。

クリニックでは主にヒルドイド®を処方していますが、まず試してみたい方は、最近ドラッグストアなどで市販薬も発売されています。

保湿剤のぬり方

1日2回(朝夕)、そのうち1回は入浴直後に塗ってもらうようにしています。塗る範囲についてはアトピー性皮膚炎合併している場合は基本的に全身に塗布を推奨しています。塗る範囲に応じて、処方量を決定していますが、保険診療でお出しできる保湿剤の量には制限がありますので、その範囲での処方になります。

スキンケアにまつわるエビデンス

食物アレルギー(FA)とアトピー性皮膚炎(AD):

1歳までに湿疹があると3歳時のFAのオッズ比3.9(95%CI:2.34-6.52)、生後1~2か月の湿疹が3歳時のFAのオッズ比6.61(95%CI:3.27-13.34)

Shoda T, et al. J Dermatol Sci. 2016 Nov;84(2):144-148

乳児期早期からの保湿剤塗布はFA発症を抑制しない

Kelleher MM, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2021 Feb 5;2(2)

AD合併の4~5か月児の生後12か月時の鶏卵アレルギー発症割合 加熱卵粉末+積極的な湿疹コントロールした群8.3%、プラセボ群37.7%(P=0.0001)

Natsume O, et al.Lancet 2017;389:276-286

アトピー性皮膚炎の発症予防と保湿剤塗布:

アトピー性皮膚炎の発症予防目的での皮脂欠乏症のない児への保湿剤塗布は勧められない

(エビデンスレベル:B) 皮脂欠乏症診療の手引き2021

新生児期から保湿剤塗布で6~8か月までのアトピー性皮膚炎累積発症率を有意に低下させた

Horimukai K, et al. J Allergy Clin Immunol 2012; 134:824-830

現時点で、積極的な保湿剤塗布が食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の発症を抑制するのかは結論が出ていませんが、湿疹や皮脂欠乏があるお子さんの皮膚をよい状態を維持することは、その後のアレルギー発症を抑制する意味でも大事なことだと思います。

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