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急性胃腸炎や脱水症のときには経口補水療法

結局、経口補水液はどれがいいのか?(2022年現在)

子どもの急性胃腸炎(出雲弁で腸感冒)はノロウイルスやロタウイルスなどのウイルスが原因となり、嘔吐や下痢などの消化器症状が認められます。こどもの急性胃腸炎は、嘔吐や下痢により、容易に脱水や低血糖になることから、注意が必要な急性疾患のひとつです。重度の脱水になると、後遺症を残したり、生命に危険が及ぶことから、軽症~中等度の脱水のうちに、脱水を補正してあげることがとても大事になります。軽症から中等症の急性胃腸炎の脱水の治療は、世界的にも経口補水療法(ORT:oral rehydration therapy)が標準治療です。

ORTは点滴の代わりに経口補水液(ORS:oral rehydration solution)を口から飲ませて水分補給する治療法です。嘔吐や下痢によって失われた水分と塩分を速やかに吸収するという期待された効果を得るためには、塩分と糖分が適切な割合に調整された製品を用いて適切にORSを飲ませる必要があります。

Na(mmol/L)K(mmol/L)CL(mmol/L)糖濃度(%)浸透圧(mOsm/L)
WHO7520651.35245
OS-1®5020501.8260
アクアライト®ORS3520301.8200
アクエリアス®経口補水液4020402.7263
アクアソリタ®3520331.9175
ポカリスエット®21516.56.7323
WHO:World Health Organization

ORTに求められる適切なORSの組成については議論があるところですが、1975年にWHOが推奨したORSはナトリウムが90mEg/L、ブドウ糖は2%の濃度で、浸透圧が311mOsm/Lと高Na、高浸透圧の組成でした。この組成はコレラなどの重度の下痢には適していますが、先進国でみられるような軽症~中等症の脱水症には適さないことが分かってきました。その後の研究で、現在は60~70mEq/Lとナトリウム濃度を低くした低張性のORSが推奨されています。

日本で市販されているORSは、WHOの推奨よりも、かなりナトリウム濃度が低いものが多いです。WHOの推奨に適合するのは、OS-1®のみになります。

ただ、ナトリウム濃度を高くすると、自然と塩味が強くなるため、味が飲みにくいというお子さんもおられます。そういった点で、アクアライト®ORSやアクエリアス®経口補水液、アクアソリタ®などで代用することも一考してもよいと思います。

手作りのORS

市販のORSが手元にない、もしくは飲みにくいなどある場合は、自宅でORSを作ることも可能です。

水1Lに対して、砂糖18g、食塩3g+柑橘系の果汁(ポッカレモン®など)少々

そのほか、みそ汁や野菜スープなども代用として一考してよいと思います。

乳児の場合

母乳や人工乳を飲んでいるお子さんについては、ふだん飲んでいる母乳やミルクで問題ないです。ミルクは薄めたりする必要はありませんし、母乳栄養であればそのまま母乳を継続しましょう。一気に飲んでしまうと、嘔吐を誘発しますので、少量ずつ飲ませるようにしましょう。

ORSの飲ませ方

嘔吐が激しい時には、まず病院でもらった吐き気止めの内服や座薬を使いましょう。

30分ぐらい経過すると、お薬が効いてきますから、その時点でORSを始めます。

ORSを飲ませるときのポイントは、「少しずつ、こまめ」にです。

ペットボトルのふた1杯、約7ml小さいおちょこ1杯、約30mlです。

例えば

体重10kgのお子さんなら

1時間で120ml~240ml ペットボトルのふたなら20~30回、小さいおちょこなら5~10回を飲ませます。次の4時間で480~960ml(ペットボトル1本~1.5本)を飲ませます。

体重20kgのお子さんなら

1時間で240ml~480ml(ペットボトル1本)、次の4時間で960~1920ml(ペットボトル2本~4本)を飲ませます。

参考文献:エビデンスに基づいた子どもの腹部救急診療ガイドライン2017

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